この記事で解決したいこと環境が変わった時に本人の混乱や行方不明を減らし、普段の支援を別の人へ引き継ぐ準備が分からない

結論: 防災用品を増やす前に、本人が安心できる呼ばれ方・伝わりやすい方法・日課・落ち着ける条件・必要な支援・連絡先を、本人と一緒に一枚へ整理します。移動時は主担当と交代者を決め、避難先の管理者へ必要最小限を伝え、静かな場所、トイレ、食事、睡眠、見守りの引き継ぎを整えます。急な様子の変化を認知症だけの問題と決めず、体調確認と医療・介護の公式な相談先へつないでください。

認知症のある人の災害への備えは、本人を「管理する方法」を増やすことではありません。普段はどう呼ばれると安心するか、どのように伝えると分かりやすいか、何時ごろ何をしているか、誰なら支援を引き継げるかを、本人と一緒に短く残すところから始めます。

防災用品の一覧は高齢者向け防災グッズの選び方に分けます。この記事が扱うのは、環境が変わっても本人の暮らしと尊厳をできるだけ保ち、家族だけで抱え込まずに支援をつなぐ準備です。

本人を準備の中心にして普段の暮らしを一枚にする

災害が起きると、住まい、周囲の人、音、明るさ、食事、トイレ、寝る場所が一度に変わります。厚生労働省が掲載する被災した認知症の人と家族の支援マニュアルは、環境、ケア、健康、心理状態が本人の様子に影響し、安心できるコミュニケーションや環境調整、健康確認が重要だとしています。

だからこそ、発災後に「認知症の人には一般にどう接するか」を検索するだけでは足りません。本人の普段を知る人しか書けない情報を、平時に残します。

  • 本人が希望する呼ばれ方
  • 一度に伝わりやすい言葉・見せ方・待つ時間
  • 起床、食事、排せつ、休息、就寝のおおよその流れ
  • 落ち着きやすい人、物、場所、話題
  • 苦手な音、混雑、照明、急な接触等
  • 今必要な介助と、普段の支援者への連絡方法

本人が話せる時は、家族だけで決めず、「避難先で誰に何を伝えてよいか」「カードをどこへ入れるか」も一緒に確認します。答えに迷う時は、一度で完成させず、日々の様子を見ながら小さく直します。

本人情報カードと個別避難計画は役割を分ける

この記事でいう「本人中心カード」は、編集部が情報整理のために付けた呼び名で、公的な証明書や医療記録ではありません。別の支援者が、本人への伝え方と当面の生活を引き継ぐための短いメモです。

一方、個別避難計画は、自力での避難が難しい人について、市町村が本人・関係者と作成を進める制度です。内閣府の案内では、避難行動要支援者名簿は2013年から市町村の作成義務、個別避難計画は2021年から市町村の作成努力義務とされています。

本人中心カードだけで避難先・移送・支援者を確定したことにはせず、自治体の対象や作成手順を確認します。家族全体の連絡・集合・代替案は家族防災会議の進め方へ分け、この記事では認知症のある本人の支援継続だけを扱います。

本人情報は六つの欄へ必要最小限に整理する

一枚には、病名や困り事を長く並べるより、支援する人が次に何をすればよいかを短く書きます。

欄 書く内容の例 書きすぎないもの
呼ばれ方・本人の希望 呼ばれたい名前、本人ができること、希望する説明 本人抜きで決めた禁止事項の一覧
伝え方 正面から一つずつ、写真を見せる、返事を待つ等 「何を言っても分からない」等の決めつけ
普段の流れ 食事、トイレ、休息、就寝の時間帯 不要な外出履歴や細かな行動監視
安心・苦手 慣れた人、好む話題、静かな場所、苦手な大音量等 周囲全員へ公開する必要のない私生活
必要な支援 歩行、食事、排せつ、見守り、感覚面で必要なこと 診断や薬の自己判断につながる指示
連絡・更新 家族、ケアマネジャー等、作成日・更新日 玄関暗証番号、鍵の場所等の防犯情報

薬はカードの短い記述だけで管理せず、現行のお薬手帳・薬剤情報を別に更新します。眼鏡、補聴器、常用薬等の持ち出しは高齢者向け防災グッズで確認してください。

持ち歩く情報と支援者だけが管理する情報を分ける

氏名、連絡先、支援内容は大切な個人情報でもあります。カードを首から常時見えるように下げると決めつけず、本人が取り出せる内ポケット、家族が持つ写し、支援者が管理する詳しい情報に分けます。

平時に次を決めます。

  1. 本人が持つ最小版
  2. 家族・支援者が持つ写し
  3. 避難所等で見せる相手
  4. 紛失時に連絡する先
  5. 変更するたび古い写しを回収する方法

避難先では周囲へ病名を広く知らせるのではなく、受付や管理者、保健・福祉の担当者へ、今必要な配慮と緊急連絡先を必要な範囲で伝えます。

移動前に主担当・交代・引き継ぎの方法を決める

「家族が迎えに行く」だけでは、道路が通れない、家族も被災した、電話がつながらない時に支援が止まります。本人のいる場所ごとに、主担当と交代者を決めます。

場面 主担当 来られない時 引き継ぐこと
自宅 同居家族等 近隣支援者、介護事業所、自治体窓口等 本人の居場所、体調、カード、移動先
通所・短期入所 施設の現行ルール 家族、施設の代替連絡先 施設の避難先、引渡し条件、薬・用品
外出先 同行者、施設管理者等 家族、警察・自治体等の現地案内 最終確認場所、服装、連絡先、支援条件

役割名は家庭で勝手に制度化せず、普段利用する介護事業所、自治体、地域の支援者が実際に担える範囲を確認します。支援者自身が危険な時に迎えへ向かわせない代替案も必要です。

支援者が来られない時の連絡先も置く

連絡先を一人だけにすると、その人の電話が使えない時に途切れます。家族、ケアマネジャー、利用中の事業所、地域包括支援センター、自治体の避難支援窓口等から、現在本人につながる順番を紙にも残します。

避難を始める時点と行き先は、認知症があることだけでは決まりません。自宅の災害リスク、自治体の避難情報、本人が移動に要する時間、個別避難計画を重ねます。一般的な判断手順は避難するかどうかの確認で確認してください。

避難先では管理者へ伝えて落ち着ける環境をつくる

避難所へ着いたら、人の少ない場所を自分たちだけで占有するのではなく、受付・管理者へ本人の状態と必要な配慮を伝えます。

厚生労働省掲載の支援マニュアルは、刺激や大声が少ない落ち着ける場所、知っている人が近くにいること、安心して眠れること、トイレを使える環境等の重要性を示しています。現場の広さと運営状況に応じ、次を相談します。

  • 出入口や人通りだけでなく、本人が落ち着ける位置
  • 正面から穏やかに、一つずつ伝えられる環境
  • トイレの場所を分かりやすく案内する方法
  • 普段に近い食事・水分・休息の時間
  • 家族が離れる時に誰へ引き継ぐか
  • 状況が続く場合の福祉・介護支援への接続

一般の避難所持ち物は避難所へ持っていく物へ分けます。持ち物だけで環境調整や人的支援を代替しません。

トイレ・食事・睡眠・小さな役割を普段へ近づける

生活の全部を災害前と同じにはできません。それでも、毎回違う人が違う指示を出すより、カードを見て短い流れをそろえる方が引き継ぎやすくなります。

  • トイレを我慢させるために飲水を減らさない
  • 食べられない時に叱ったり急がせたりしない
  • 夜に眠れない時は光・音・寝る位置を相談する
  • 本人が続けられる小さな作業や役割を一緒に探す
  • 眼鏡・補聴器等、普段の感覚を支える物を使える状態にする

本人ができることまで家族や支援者がすべて取り上げず、危険のない範囲で選択肢を示します。支援の速度より、本人に伝わったかを確認します。

行方不明を防ぐ見守りは交代と声かけでつなぐ

慣れない場所で歩き回る、出口へ向かう、家へ帰ろうとする様子があっても、叱って座らせるだけでは背景が分かりません。トイレへ行きたい、不安が強い、知っている人を探している、暑い・痛い等、本人が言葉にしにくい理由がないかを確認します。

見守りは「誰かがずっと見る」という曖昧な約束にせず、次の四点を引き継ぎます。

  1. 今いる場所と、本人の服装・持ち物
  2. 最後に食事・水分・トイレ・休息を取った時点
  3. 今の様子と、落ち着いた声かけ・場所
  4. 次の担当者と、交代を確認した時刻

家族がトイレや手続きで離れる時は、無言でその場を離れず、本人と次の担当者の双方へ伝えます。人手が足りない時は抱え込まず、避難所の管理者へ見守りと位置の相談をしてください。

鍵や身体拘束を家庭だけの判断で対策にしない

本人を部屋へ閉じ込める、椅子や寝具へ縛る、薬で動きを抑えようとする対応を、この記事は防災策として勧めません。出口や危険物との位置を見直し、穏やかな声かけ、付き添いの交代、別の落ち着ける場所、保健・福祉担当への相談を先に行います。

本人が見当たらない時は、家族だけで探し続けず、避難所管理者、自治体、警察等へ早く伝えます。最後に見た場所と時刻、服装、持ち物、向かいそうな場所、本人への伝え方を共有してください。危険区域へ捜しに入らず、現地の指示に従います。

急な変化を認知症のせいと決めず健康相談へつなぐ

災害後に急に反応が鈍くなった、落ち着かなさが強くなった、食べない、眠れない等の変化があっても、家族が「認知症が進んだ」と決めません。

厚生労働省掲載のマニュアルは、急な変化の背景に脱水、発熱、痛み、便秘等の身体状態が隠れる場合があるため、健康状態の確認と相談が必要だと説明しています。本人が症状をうまく訴えられないことも考え、次を短く記録して避難所の保健・医療担当、かかりつけ医、地域の相談窓口等へ伝えます。

  • いつから、普段と何が違うか
  • 食事、水分、排せつ、睡眠の変化
  • 発熱、痛み、けが、呼吸等で気づいたこと
  • 現在の薬と、最後に通常どおり使えた時点
  • 移動先と環境が変わった時点

この記事で病名や緊急度を診断しません。意識・呼吸がおかしい、強い痛みやけが等の差し迫った状態では、避難所の担当者を探し続けるだけでなく119番等へ連絡してください。

薬は自己判断で増減・中断しない

落ち着かないからと薬を増やす、眠そうだから中断する、他の人の薬を使うことはしません。現在の薬、お薬手帳・薬剤情報、アレルギー等の情報を、処方元・薬局・現地の医療担当へ示します。

薬が足りない、保管条件を守れなかった、服用できたか分からない時も、編集部の記事で判断せず、専門職へ相談します。本人中心カードには「薬の変更指示」を書かず、現行情報の場所と相談先だけを結びます。

家族介護者も休める交代先と相談先を持つ

家族が一人で見守り、手続き、物資受取、排せつ介助、連絡を続けると、休息も判断力も失われます。「本人から離れられない」を家族の努力だけで解決せず、交代を依頼する合図を決めておきます。

  • 自分が眠れていない
  • 食事・水分を取れていない
  • いら立ちや不安が強く、穏やかに接するのが難しい
  • 本人の移動や排せつを一人で支えられない
  • 手続きのため、どうしてもその場を離れる

家族が休むことは本人を見捨てることではありません。本人のカードと現在の様子を次の担当へ渡し、交代を双方で確認します。

ケアマネジャー・地域包括支援センターへ再接続する

介護サービスを利用している場合はケアマネジャーや利用事業所へ、利用していない場合や相談先が分からない場合は地域包括支援センターや自治体の高齢者・福祉窓口へ連絡します。避難所で支援が必要な時は、受付・管理者、保健師等の巡回担当にも伝えます。

連絡先や利用できる支援は地域・被害・開設状況で変わります。平時に保存した番号が使えない場合は、自治体の最新災害情報から現行窓口を探します。在宅を続ける場合の生活条件は在宅避難の備えも確認してください。

今日、本人中心カードを一枚作る

紙を一枚用意し、本人と一緒に次の六欄だけを書きます。

  1. 呼ばれ方・本人の希望
  2. 伝わりやすい方法
  3. 普段の日課
  4. 安心できる条件・苦手な刺激
  5. 必要な支援
  6. 家族・支援者の連絡先

最後に、作成日、次の更新日、見せてよい相手を書きます。薬剤情報や個別避難計画を一枚へ詰め込まず、それぞれの正本がどこにあるかだけ結びます。

今日は全部を完成させなくて構いません。まず、本人が希望する呼ばれ方と、普段もっとも安心しやすい条件を一つずつ本人に確かめてください。それが、災害時にも本人を準備の中心へ戻す最初の一歩です。

よくある質問

認知症のある人の防災で最初に決めることは何ですか?

用品を増やす前に、本人と一緒に、安心できる呼ばれ方、伝わりやすい方法、普段の日課、落ち着ける条件、必要な支援、家族・支援者の連絡先を一枚にします。避難を支援する主担当だけでなく、来られない時の交代者と引き継ぎ方法も決めてください。

避難所で認知症があることを伝えた方がよいですか?

本人の安全と必要な配慮につながる範囲で、受付・管理者・保健師等の担当者へ伝えます。病歴を周囲全員へ公開するのではなく、落ち着ける場所、トイレへの案内、伝わりやすい声かけ、見守りの交代等、今必要な支援と連絡先を必要最小限で共有してください。

行方不明を防ぐため、出入口を施錠してよいですか?

家庭だけの判断で本人を閉じ込めたり身体を拘束したりする対策にはしません。危険な場所から離し、避難先の管理者へ状況を伝え、落ち着ける位置、声かけ、付き添いの交代、離れる時の引き継ぎを相談します。差し迫った危険や行方不明が生じた時は、施設管理者、自治体、警察等の現地案内に従ってください。

災害後に急に混乱が強くなったら認知症の進行ですか?

記事だけで判断できません。環境変化だけでなく、脱水、発熱、痛み、便秘、けが、睡眠不足等が関係することもあります。普段との違いと発生時点を支援者へ伝え、避難所の保健・医療担当、かかりつけ医、地域の相談窓口等へつないでください。反応が乏しい、呼吸がおかしい等の緊急性があれば119番等へ連絡します。

認知症の薬は災害時に減らしたり中断したりしてよいですか?

自己判断で量・回数・種類を変えたり中断したりしません。現在の薬とお薬手帳・薬剤情報を持ち、処方元、薬局、避難所の医療担当等へ相談してください。この記事は個別の投薬判断を行いません。