この記事で解決したいこと通院施設で透析できない時に、どの治療情報を持ち、誰へ連絡し、別の施設へどうつないでもらうか分からない
結論: 透析の災害への備えは、現在の透析条件・薬・アレルギー等を紙と電子で残し、通院施設の災害時連絡手順、施設が使えない時の情報確認先、移動支援を平時に確認することが中心です。発災時は身の安全を確保し、通院施設へ連絡します。避難先では透析を受けていることと最終透析日時を早く伝え、日本透析医会や自治体の稼働情報を確認しながら受入調整へつなぎます。透析日程、食事・水分、薬は自己判断で変えず、透析施設から受け取った本人用指示に従ってください。
透析を受けている人の災害への備えは、非常食を増やすだけでは足りません。通院施設が被災すると、普段の施設から紹介状を受け取れないまま、別の医療者へ治療を引き継ぐ可能性があります。
準備の中心は、透析条件を紙と電子で持つ、通院施設の災害時連絡順を確認する、避難先で早く申し出る、稼働情報を受入調整へつなぐの四つです。
この記事は「そなえ1,2,3 編集部調べ」として、治療をつなぐための情報整理と公式窓口への進み方を扱います。透析の延期・短縮・中止、食事・水分・薬の変更は、本人・家族や記事の判断で決めません。
透析条件を一枚と電子記録の二系統で残す
日本透析医学会「災害に対する備え」は、かかりつけ施設が被災すると紹介状を作れず、患者本人が持つ治療内容の資料が重要になる可能性を案内しています。
まず、透析手帳や施設から渡された資料を基に、別の医療者へ短時間で見せられる条件カードを作ります。
| 欄 | 記録する内容 |
|---|---|
| 本人 | 氏名、生年月日、本人・家族の連絡先、支援時の配慮 |
| 透析 | 血液透析・腹膜透析等の方法、普段の曜日・開始時刻、最終透析日時 |
| 条件 | 施設から示された基準体重、治療条件、最近の記録がある資料 |
| 体の情報 | シャント等の位置・状態を伝える施設資料、アレルギー、感染症に関する記録 |
| 薬・器材 | お薬手帳、薬袋、本人用の薬・器材の正確な名称 |
| 連絡 | 通院施設、薬局、主治医、災害時の別連絡先 |
| 移動 | 歩行、車いす、介助、送迎、付き添い等の必要 |
| 更新 | 作成日、治療変更日、次回確認日 |
カードの項目は、自己流で治療条件を要約せず、透析施設に「別の施設へ渡すなら何が必要ですか」と確認します。施設の患者カード、透析手帳、お薬手帳がある場合は、その名称と保管場所も記録してください。
治療名だけでなく引き継ぎに必要な項目をそろえる
「透析を受けています」だけでは、受入側が同じ条件を確認できません。少なくとも、次を施設資料から写します。
- 透析方法と普段の通院予定
- 最後に透析を受けた日・開始時刻・終了時刻
- 施設が示す基準体重と直近の治療記録
- シャントやカテーテル等について施設から受けた情報
- 薬名、アレルギー、感染症情報等、受入側へ伝える項目
- 移動・介助・意思疎通で必要な支援
数値の意味を家族が解釈するための表ではありません。受入先へ、普段の治療を正確に渡すための資料です。
家族・支援者へ提示場所を共有する
紙は防水袋へ入れ、普段の持ち物と持ち出し用に分けます。電子版は資料の写真やPDFを端末へ保存し、通信がなくても開けるか確認します。紙と電子を同じ日に更新し、古い資料へ更新日を付けます。
本人が説明できない時に備え、家族・支援者へ次を共有します。
- 紙カード、透析手帳、お薬手帳の場所
- スマホで記録を開く方法
- 通院施設・家族・支援者の連絡順
- 避難所等で誰へ提示するか
個人情報を袋の外側に大きく表示せず、必要な相手へすぐ出せる収納にします。高齢の家族の薬・移動・補助具全体は高齢者の防災用品へ分けます。
通院施設が使えない時の連絡順を平時に決める
災害時の連絡方法は施設・地域で異なります。電話番号を保存するだけでなく、定期受診時に次の順番を確認します。
- 施設が安全で診療できるかを、どの方法で知らせるか
- 電話がつながらない時に見る公式ページ・連絡手段は何か
- 自施設で透析できない時、患者はどこで案内を受けるか
- 別の施設への受入調整は誰が行うか
- 移動が難しい人は、どこへ相談するか
回答を一枚にまとめ、通院施設の電話、公式サイト、都道府県・自治体の保健医療窓口、日本透析医会の情報入口を保存します。
施設へ確認する質問を一枚にする
受診時に、具体的な場面で質問すると確認漏れを減らせます。
- 透析中に地震・停電が起きたら、患者はどう指示を受けるか
- 自宅で被災した時、次回予定をどこで確認するか
- 施設の電話が不通なら、別の番号・Web・伝言手段はあるか
- 支援透析へ移る時、持参する資料・薬・器材は何か
- 食事・水分・薬について、本人用の書面指示を受け取れるか
家族との連絡が混雑する場合に備え、171・web171の使い方も別に確認します。171は医療機関の受入調整を行う仕組みではなく、家族間の安否・居場所を残す補助手段です。
移動と付き添いの条件も伝えられるようにする
受入先が決まっても、道路・公共交通・送迎が使えるとは限りません。条件カードへ次を加えます。
- 一人で移動できるか、車いす・杖・介助が必要か
- 乗り降りや長距離移動で必要な支援
- 家族・支援者が付き添える時間帯
- 普段の送迎事業者と、災害時の案内確認先
- 自宅・避難先の正確な場所と連絡方法
自分で移動できない時は、無理に出発せず、施設・自治体・避難所の医療救護等へ現在地と支援条件を伝えます。
発災時は安全確保から施設連絡へ進む
発災直後は、治療先探しより先に倒壊・津波・浸水・火災等から身を守ります。安全な場所へ移った後、通院施設が事前に示した方法で診療状況と次の案内を確認します。
電話がつながらないからと、普段と同じ時刻に施設へ向かうとは限りません。建物、設備、水、電気、道路が使えるか分からず、施設側が受入人数や時間を調整している場合があります。
透析中は施設スタッフの指示に従う
透析中に地震等が起きた場合は、自分で装置や回路を操作したり、判断だけで退出したりせず、身を守りながら施設スタッフの指示に従います。日本透析医学会の患者向けまとめも、揺れが収まった後の退避等はスタッフの指示を受けて行動するよう案内しています。
施設から離れる前に、可能なら次回予定、連絡方法、施設資料の持ち出し可否を確認します。ただし、津波・火災等が迫る時は資料より命を守る避難を優先してください。
避難先では透析を受けていることを早く申し出る
避難所、在宅避難者の受付、医療救護、巡回する保健師等へ、透析を受けていることを自分から伝えます。
伝える順番は次のとおりです。
- 透析を受けていることと透析方法
- 最終透析日時と普段の予定
- 通院施設と連絡できているか
- 条件カード・透析手帳・お薬手帳を持っているか
- 移動・介助・付き添いが必要か
避難所の受付で自動的に治療情報が医療側へ伝わるとは限りません。受付後も医療・保健担当へ伝えます。避難所外にいる場合の登録は在宅避難で支援につながる手順で確認してください。
稼働情報を見て受入調整と引き継ぎにつなぐ
日本透析医会「災害時情報ネットワーク」は、震度6弱以上の地震や災害救助法が適用されるような広域災害等で活動し、施設情報を更新する仕組みです。厚生労働省も、透析を受けられる医療機関等の情報先として各都道府県と同ネットワークを案内しています。
発災時は、次を同時に確認します。
- 通院施設からの連絡・公式サイト
- 都道府県・自治体の保健医療情報
- 日本透析医会の災害時情報ネットワーク
- 避難所・救護所・医療機関からの案内
情報には必ず災害名、地域、施設名、更新時刻があります。古い画面のスクリーンショットや転送投稿だけで判断せず、現行の公式ページへ戻ります。
情報掲載と自分の受入決定を混同しない
施設が「稼働」「受入可能」と表示されても、自分がそのまま向かえば受け入れられるとは限りません。患者数、治療条件、道路、移動手段、受付時間等の調整が必要です。
次を確認してから移動します。
- 誰が受入先を調整したか
- 受入施設名・入口・受付時刻
- 持参する条件カード・薬・器材
- 移動方法と付き添い
- 予定変更時の連絡先
SNSで「空いている」と見た施設へ一斉に向かわず、通院施設、都道府県・自治体、医療救護等の案内につなげてください。
受入先へ条件カードと最終透析情報を渡す
受入先では、条件カードを最初に見せ、最終透析日時、現在地からの移動、直近の体調変化、薬の使用状況を事実として伝えます。
「普段と同じでお願いします」とだけ伝えず、施設資料を渡します。受入側が災害時の医療資源と状態を踏まえて治療を決めるため、本人・家族が普段の時間や条件を要求どおり再現させるものではありません。
食事・水分・薬・透析日程を自己判断で変えない
災害時は食事・飲料・薬の入手や透析予定が変わることがあります。しかし、一般向け記事から「水分は何mL」「何を食べない」「薬を増減する」「透析を何日延ばす」と決めるのは危険です。
透析方法、体格、残存腎機能、検査値、薬、発災後の治療予定で指示が変わります。平時に透析施設から本人用の書面指示を受け、条件カードと一緒に持ってください。
本人用の災害時指示を透析施設から受け取る
施設へ次を質問し、回答者・確認日を記録します。
- 次の透析予定が変わる時、どこから案内を受けるか
- 食事・水分・薬について本人が守る指示は何か
- 薬や腹膜透析用品等が足りない時、どこへ連絡するか
- いつもの機器・方法を使えない時、本人が何を伝えるか
- どの体調変化で施設連絡・救護・119番へ進むか
本人用指示は家族が治療を変更する許可ではありません。医療者へ状態を伝え、次の指示を受けるまでの確認票として使います。
連絡不能や急な体調変化は医療救護・119番へつなぐ
施設へ連絡できず、体調に急な変化がある時は、避難所の医療救護、自治体の保健医療窓口、近くの医療機関へ条件カードと最終透析日時を伝えます。呼吸が苦しい、意識がおかしい、強い胸の痛み等の緊急時は、記事を読み続けず119番や周囲の人へ助けを求めてください。
薬がない時に他人の薬を使う、余らせるために服用を止める、家族が量を変えることは避けます。避難所の持ち物には、本人用の薬・資料・衛生用品を追加してください。
治療変更と連絡訓練のたびに更新する
条件カードは一度作って終わりではありません。透析方法・条件・薬・通院先・連絡先・移動支援が変われば、古い情報が引き継ぎを遅らせます。
次のタイミングで見直します。
- 透析条件や薬が変わった日
- 通院施設・薬局・送迎が変わった日
- 家族・支援者の連絡先が変わった日
- 自治体や施設の防災訓練に参加した日
- 三か月ごとの固定確認日
カード・連絡先・家族共有を同じ日に見直す
更新日は、次を一度に行います。
- 紙カード、透析手帳、お薬手帳の内容を確認する
- 電子の写真・PDFを差し替え、通信なしで開く
- 通院施設の災害時連絡方法を公式ページで確認する
- 家族がカードの場所と提示先を説明する
- 避難先から移動支援を伝える練習をする
自宅に残る備え全体は在宅避難の備えで整理し、透析条件カードは本人専用の引き継ぎ資料として分けて保管します。
まとめ:条件カード・施設連絡・稼働情報・受入調整を一本につなぐ
透析の災害への備えは、代わりの病院名を一つ決めて終わりではありません。紙と電子の条件カード、通院施設の連絡順、避難先での申告、公式の稼働情報、受入・移動調整を一本につなぎます。
平時に透析施設へ本人用の災害時指示を確認し、治療変更時にカードを更新してください。発災時は安全確保後に施設へ連絡し、透析を受けていることと最終透析日時を早く伝えます。日程・食事・水分・薬を自己判断で変えず、次の医療者へ正確な情報を渡すことが優先です。
よくある質問
透析条件カードには何を書きますか?
氏名・連絡先、透析方法、普段の曜日・時間、最終透析日時、基準となる体重、シャント等の情報、薬・アレルギー、通院施設・薬局、移動や介助の必要を、施設から渡された手帳・資料に合わせて記録します。項目と表現は透析施設に確認し、治療変更時に更新してください。
かかりつけの透析施設と連絡できない時はどうしますか?
安全な場所で、施設が事前に案内した別の連絡方法、都道府県・自治体の保健医療情報、日本透析医会の災害時情報ネットワーク、避難所の医療救護等を確認します。現在地、最終透析日時、条件カード、移動可否を伝え、受入先の調整を依頼してください。
災害時情報ネットワークに載った施設へ直接行ってよいですか?
掲載情報だけで自分の受入が決まったとは限りません。道路・交通、施設の受付能力、患者の状態により調整が必要です。通院施設、自治体・都道府県、避難所の医療救護等から、受入先・時刻・移動方法の案内を受けてから向かってください。
次の透析日まで水分や食事をどう変えますか?
一律の量をこの記事では決めません。透析方法、体格、残存腎機能、検査値、薬、災害後の治療予定で変わります。平時に透析施設から本人用の書面指示を受け、発災時は担当する医療者へ確認してください。一般向け記事や周囲の人の判断で水分・塩分・カリウム・薬を変更しません。
予定日に透析できない時、自分で翌日へ延ばしてよいですか?
自己判断で延期・短縮・中止しません。通院施設または支援側の医療者へ最終透析日時と現在の状態を伝え、案内を受けてください。連絡がつかず体調に急な変化がある、呼吸が苦しい、意識がおかしい等の緊急時は119番や周囲の医療救護へつなぎます。





