この記事で解決したいこと災害前と現在の何を比べ、どの生活動作を続け、どの変化を健康相談へ伝えるか分からない

結論: 生活不活発病は、災害後に動かない生活が続き、心身の機能が低下してさらに動きにくくなる状態です。体操の回数だけで管理せず、災害前と現在の屋外歩行、室内移動、入浴・洗面・トイレ・食事、車いす、外出、日中の活動を比べます。安全な通路と支援を確保し、本人ができる食事・着替え・片付け、小さな役割や楽しみを続けます。歩行や身の回り動作が一段階でも低下した、痛み・息切れ・転倒不安等がある時は、無理に運動せず保健師・医療・福祉職へ相談してください。

生活不活発病を防ぐ時は、「一日何分運動したか」だけを数えません。まず、災害前にしていた生活動作と、今できている動作を比べます。

歩く、立つだけでなく、食事、着替え、洗面、トイレ、片付け、人と話す、小さな役割を持つことも活動です。必要な休息は取りつつ、安全にできる日常動作を全部周囲が代わらないことが出発点です。

生活不活発病は動かない生活が続く悪循環

厚生労働省「避難生活に伴う心身の機能の低下の予防」は、生活不活発病を、「動かない」状態が続くことにより心身の機能が低下して「動けなくなる」ことと説明しています。

災害後は、疲労、余震への不安、狭い寝床、通路の荷物、トイレの遠さ、家事や仕事の停止、周囲の「休んでいて」という配慮が重なります。結果として、次の循環が起こりやすくなります。

  1. 普段の外出・家事・身の回りの動作が減る
  2. 心身の疲れや筋力・体力の低下が進む
  3. 立つ、歩く、トイレへ行くことが難しくなる
  4. 転倒を心配してさらに動かなくなる
  5. 周囲がすべて代わり、本人の活動機会が減る

生活不活発病は高齢者だけの問題ではありません。ただし、高齢者や持病・障害がある人は影響を受けやすいため、普段との差を早めに見ます。

安静を増やすほど安全とは限らない

けが、病気、強い疲労がある時には休息や医療者の指示が必要です。一方、危険がない動作まで長く止め続けることを「念のための安静」にしません。

動かすか寝かせるかを家族だけで決めず、本人へ普段と違う点を聞き、避難所の健康相談や巡回職へつなぎます。

災害前と今の生活動作を六項目で比べる

厚生労働省の生活不活発病チェックリストは、災害前と現在を並べて比べる形式です。次の六項目を、一番よい状態でなく「実際に普段していた状態」と比べます。

比べる項目 災害前の例 現在の確認
屋外を歩く 遠くまで一人、近くまで一人、誰かと一緒等 外出できるか、距離や支援が変わったか
室内を歩く 支えなし、家具や壁、誰かの支え等 寝床・トイレ間をどう移動しているか
身の回り 入浴、洗面、トイレ、食事等 不自由さや手助けが増えたか
車いす 未使用、時々、いつも 使用の有無・頻度が変わったか
外出の回数 ほぼ毎日、週単位、月単位等 避難後に外へ出る機会が減ったか
日中の活動 外・家で動く、座る、横になる等 座る・横になる時間が増えたか

数字だけでなく、「トイレの立ち上がりに手が必要になった」「食事を寝床で取るようになった」等、変わった場面を記録します。

一段階でも下がった動作を早めに共有する

チェックリストは、災害前と比べて現在が一段階でも低下した場合に早く手を打つよう案内しています。家族が「年齢のせい」「疲れているだけ」と決めず、本人の変化を避難所の保健師・医療・福祉職へ伝えます。

できなくなったことだけでなく、いつから、どの場所で、痛み・息切れ・めまい・不安等があるかも共有します。

体操だけでなく毎日の生活そのものを動きへ戻す

厚生労働省の避難所向け資料は、毎日の生活の中で活発に動くことを予防のポイントにしています。横になっているよりなるべく座る、身の回りを片付けて動きやすくする、散歩や運動を取り入れる、避難所でも楽しみや役割を持つことを例示しています。

ただし、体操の回数や歩く時間を家族全員へ同じにしません。まず、普段していた生活動作を安全な形で戻します。

食事・トイレ・着替え・片付けをできる範囲で続ける

  • 食事を取れる安全な場所へ自分で移る
  • 座って食べ、食後に自分の食器・ごみを整理する
  • 着替え、洗面、歯磨き等を本人ができる範囲で行う
  • トイレまでの移動・立ち上がりに必要な部分だけ支援する
  • 寝具や身の回りを、無理のない範囲で整える
  • 日中は横になり続けず、安全な座位へ移る

避難所の衛生・健康に必要な持ち物は避難所へ持っていく物で扱います。用品があっても、本人が使える置き方と動線がなければ活動へつながりません。

安全な通路と立ち上がりやすい環境を先につくる

「歩きましょう」と声をかける前に、歩ける環境かを確認します。

  • 寝床からトイレ・食事場所まで荷物がはみ出していない
  • 夜間にも足元と段差が分かる
  • 床の濡れ、コード、めくれた敷物等がない
  • 履物が脱げやすくなく、本人が使い慣れている
  • 立ち上がる時に安定して使える支えがある
  • 杖、歩行器、車いす等を手の届く場所へ置ける
  • 暑さ・寒さ、雨風、感染症等、外を歩けない条件が共有されている

内閣府の避難所運営ガイドラインは、生活不活発病対策の体操等に加え、立ち上がりやすい簡易ベッドも生活不活発病防止に効果的としています。必要な寝床や動線は、個人で場所を変えず運営者へ相談します。

杖や車いすを急に外さず必要な支援を頼む

活動を増やすために、杖や車いすを急にやめたり、普段より遠くへ一人で歩かせたりしません。普段使う補助具、介助方法、転倒歴をスタッフへ伝えます。

高齢者の防災用品は補助具・薬情報・個人用品の準備を所有します。本稿は商品の選び方でなく、災害前と現在の動作差を見つけることを扱います。

役割と楽しみを小さく持ち活動のきっかけを作る

避難生活では、普段の仕事、家事、通学、買い物、近所付き合いが突然なくなります。運動時間だけを追加するより、本人が選べる小さな役割と楽しみを生活へ戻します。

  • 家族の連絡メモを整理する
  • 配付時刻を確認して家族へ伝える
  • 自分の寝床まわりを整える
  • 好きな音楽、読書、手仕事をする
  • 安全な時間と場所で人と話す
  • 掲示を見に行く、窓辺まで移る等の目的を作る

本人が嫌がる作業を「リハビリ」として押し付けません。今日は何をしたいか、どこまで自分でやりたいかを聞きます。

手伝い過ぎず本人の選択を残す

支援は、全部代わるか一人で任せるかの二択ではありません。準備だけする、危険な部分だけ支える、時間を待つ等、本人ができる部分を残します。

認知症のある人は、普段の生活リズムや伝わりやすい声かけも重要です。認知症のある人の災害への備えと組み合わせ、本人の役割を周囲だけで決めないでください。

痛み・息切れ・転倒不安・急な低下は運動で様子見しない

動けなくなった理由は生活不活発病だけとは限りません。けが、脱水、感染症、暑さ・寒さ、持病、薬、食事不足、睡眠不足等でも動作は変わります。

次があれば、運動量を増やして様子を見ず、避難所のスタッフ・健康相談、保健師、医療・福祉職へ伝えます。

  • 災害前より歩行、立ち上がり、トイレ等が難しくなった
  • 痛み、息切れ、めまい、動悸、強い疲れがある
  • 転んだ、転びそうで動けない
  • 食事・水分が取れない、排泄が大きく変わった
  • 受け答え、意識、呼吸等に急な異常がある

最後のような緊急性がある時は、通常の相談を待たず、スタッフへ緊急で伝え、119番を含む救急案内へ従います。

保健師・医療・福祉職へ災害前との違いを伝える

相談時は「運動不足です」だけで終わらせず、災害前の状態と現在を並べます。

  • 災害前はどこまで一人で歩いていたか
  • 現在は何につかまり、誰の支援が必要か
  • どの動作が、いつから難しいか
  • 痛み・息切れ・めまい等はあるか
  • 使っていた補助具、介護サービス、医療指示

在宅避難では、自治体の保健・高齢者・障害福祉窓口、かかりつけ医、ケアマネジャー等へつなぎます。在宅避難の備えと合わせて、支援先を平時に保存してください。

車中泊の血栓対策は別の安全条件へ分ける

生活不活発病と、長時間同じ姿勢等に関連する静脈血栓塞栓症は、どちらも「動かないこと」が話題になりますが、同じ病気ではありません。車中泊には、駐車場所、避難者登録、暑さ・寒さ、浸水、排気ガス・一酸化炭素、血栓等の固有条件があります。

A128「車中泊避難の注意点」の公開後に、車を選んでよい条件から退出判断までを専用記事へ分けます。本稿の小さな生活動作だけで車中泊の安全を判断しません。

生活不活発病と同じ言葉で自己判断しない

片脚の腫れ・痛み、胸痛、呼吸の異常等、血栓が疑われる症状を体操で解消しようとせず、緊急性をスタッフ・医療へ伝えます。弾性ストッキングの使用や運動の内容を自己判断せず、医療者の指示へ戻します。

今日、普段と今の動作を一つだけ比べる

家族一人について、次の一文を書きます。

災害前は( )を(支えなし・道具・人の支援)でしていた。今は( )が違う。

全部を一度に調べなくて構いません。今日は「寝床からトイレまで」「着替え」「食事場所へ移る」のどれか一つを、本人と一緒に比べてください。違いがあれば、いつから変わったかも書き、健康相談へ持っていきます。

まとめ:普段との差を見つけ、できる生活動作を切らさない

生活不活発病の予防は、災害前と今を比べる→安全な通路と支援を整える→食事・着替え・トイレ等をできる範囲で続ける→役割と楽しみを持つ→動作低下や症状を早く相談するという流れです。

体操だけに置き換えず、本人が普段していた生活を小さく戻します。手伝う時も、本人にできる部分と選択を残してください。

よくある質問

生活不活発病とは何ですか?

厚生労働省は、動かない、つまり生活が不活発な状態が続くことにより心身の機能が低下し、動けなくなることと説明しています。避難所だけでなく、在宅避難や親戚宅等でも、普段の家事・外出・役割が減ると起こり得ます。

避難所では体操をすれば予防できますか?

体操は一つの方法ですが、それだけで十分とはしません。食事の場所へ安全に移動する、着替える、身の回りを整える、できる小さな役割を持つ等、毎日の生活全体を活発にすることが基本です。病気や痛みがある時の運動は保健師・医療・福祉職へ相談してください。

高齢者の世話は全部代わった方が安全ですか?

危険な作業は代わりますが、本人が安全にできる動作まで一律に代わると活動が減ります。通路、明るさ、履物、杖等を整え、本人へ希望を聞き、必要な部分だけ支援します。普段より歩行・立ち上がり等が難しくなったら早めに相談します。

何分歩けばよいですか?

年齢、持病、けが、暑さ・寒さ、避難環境で安全な量が変わるため、一律の時間や回数は決めません。まず災害前にしていた生活動作と現在を比べ、安全な範囲を施設の保健師・医療・福祉職へ相談してください。

生活不活発病が心配な時の相談先はどこですか?

避難所では運営スタッフ、健康相談、巡回する保健師・医療・福祉職へ、在宅避難では自治体の保健・高齢者・障害福祉窓口、かかりつけ医、ケアマネジャー等へつなぎます。災害前と今で何が難しくなったかを具体的に伝えます。