この記事で解決したいこと家が立っているように見えれば在宅避難できるのか、生活や健康まで何を確認すべきか分からない

結論: 在宅避難は、周辺に差し迫る危険がない、建物へ留まる安全を否定する情報がない、安全な居住空間と出口がある、水・トイレ等を安全に使える、家族の健康・医療・介助を保てる、公式情報と支援につながれる、という六条件で判断します。一つでも満たせない時や状況が変わった時は、指定避難所、親戚・知人宅等の安全な場所へ移ります。

在宅避難は、避難所へ行かないための我慢ではありません。その時点で安全に暮らせる場所が自宅なら自宅に留まり、条件が崩れたら別の安全な場所へ移るという、見直しを前提にした避難生活です。

「家が立っている」「慣れた自宅のほうが落ち着く」だけでは決められません。周辺、建物、居住空間、ライフライン、家族の健康・支援、公式情報への接続を、上から順に確認します。

在宅避難は六つの条件を上から確認して決める

在宅避難を始める時と続ける時は、次の六条件を確認します。上ほど優先度が高く、安全を確認できない段階を飛ばして「備蓄があるから残る」とは決めません。

順番 確認する条件 留まらない・見直す例
1. 周辺 火災、煙、津波、浸水、土砂、隣家や電柱等の危険が迫っていない 避難指示、津波警報、延焼、浸水上昇、土砂の兆候等
2. 建物 倒壊・落下等の明白な危険や、公的な危険判定がない 大きな傾き、崩落、落下物、行政・専門家等からの危険指示
3. 居住空間 安全に使える部屋と、塞がれていない出口がある ガラス・家具・天井材等で生活場所や出口を確保できない
4. ライフライン 水、トイレ、電気・ガス等を案内どおり安全に扱える 排水不明、断水、停電、ガス臭、衛生を保てない
5. 健康・支援 温度、食事、薬、医療機器、介助等を一人ずつ保てる 熱中症・低体温の危険、体調悪化、医療・介助の中断
6. 情報・支援 自治体の最新情報を受け、必要な支援へつながれる 通信不能、孤立、支援の必要を伝えられない

六つすべてが永続的にそろう必要がある、という意味ではありません。復旧見込み、代替手段、家族の状態を含め、その時点で安全を保てるかを見ます。ただし、分からない状態を「たぶん大丈夫」に置き換えないことが大切です。

一つでも安全を保てなければ別の場所へ移る

移る先は指定避難所だけではありません。災害の種類に適合する指定緊急避難場所、親戚・知人宅、安全な宿泊施設等を自治体の案内と合わせて選びます。避難所の開設や受入状況は変わるため、避難判断の確認順と自治体の最新情報を先に見てください。

危険が迫っている時は、六条件を紙に埋める必要はありません。火災、津波、急な浸水、土砂、倒壊等から命を守る行動を優先します。

周辺の火災・津波・浸水・土砂災害を先に確認する

自宅の室内が片付いていても、周辺の危険が迫っていれば在宅避難の条件を満たしません。自治体、気象庁、消防・警察等の情報を確認し、次のような状況では安全な場所へ移ります。

  • 大きな火災や煙が近づき、延焼・有害な煙のおそれがある
  • 強い・長い揺れや津波警報等があり、津波からの避難が必要
  • 河川の氾濫、内水氾濫、高潮、土砂災害等の危険が高まり、立退き避難の対象になっている
  • 隣接する建物、塀、電柱、斜面等に倒壊・落下・崩落のおそれがある
  • 自治体、消防、警察等が区域からの避難を案内している

外の様子を確かめるため、煙、切れた電線、崩れた壁、斜面、増水した道路へ近づきません。室内から見えない危険は、公式情報と周囲からの案内で補います。

屋内安全確保と被災後の在宅避難は同じではない

風水害で使われる「屋内安全確保」は、立退き避難がかえって危険な時等に、自宅・施設の上階などで身の安全を確保する避難行動です。災害後に数日以上の生活を続ける「在宅避難」とは、目的と時間軸が異なります。

東京都の風水害案内は、屋内安全確保が可能となり得る条件として、家屋が流されるおそれのある区域外、居室が想定浸水深より高い、浸水継続による孤立等の支障を許容できることを挙げています。

「二階があるから残る」と全国一律には決められません。平時に地域のハザードマップと自治体の避難計画を確認し、警戒時は最新の避難情報に従います。

建物の安全を自分だけで断定しない

在宅避難は、自宅等が安全であることが前提です。しかし、専門知識のない人が外観だけで構造の安全を確定することはできません。

離れた安全な位置から、大きな傾き、崩落、外壁・屋根材等の落下、火災・煙、ガス臭、扉や出口の変形など、明白な異常に気づいたら近づかず、消防・自治体・建物管理者等へ連絡します。確認のために損傷した建物へ戻ったり、屋根・外壁・高所・床下を調べたりしないでください。

異常が見えないことは「安全」の証明ではありません。余震、地盤、隣接建物、設備の損傷等もあり得ます。応急危険度判定が行われた場合や、行政、消防、警察、管理者、建築専門家等から案内がある場合は、その結果・指示を記事より優先します。

応急危険度判定や管理者・専門家の指示を優先する

東京都「東京くらし防災」は、応急危険度判定に数日以上かかる場合があると案内しています。判定を待つ間も、危険の疑いがある建物に留まり続けるという意味ではありません。

2026年公表の東京都「在宅避難者の生活への支援ガイドライン」も、住民による発災直後の安全確認は緊急的なものとし、行政・専門家等から危険と指摘された場合は別の場所へ避難する必要があるとしています。

マンションでは、専有部の見た目だけでなく、共用部、出入口、エレベーター、給排水設備、管理側の確認も必要です。マンション防災の備えと、管理組合・管理会社・自治体の案内を合わせてください。

安全に使える部屋・出口・水・トイレを確認する

建物へ留まれる見込みがあっても、暮らしを安全に続けられる空間がなければ、在宅避難を継続できません。

まず、次を確認します。

  • 落下・転倒・破損物から離れた居住スペースを確保できる
  • 玄関や別の出口へ安全に移動でき、扉が開く
  • 火気や暖房器具を安全に停止でき、煙・ガス臭・焦げ臭さがない
  • 水・食事を衛生的に確保できる
  • 排水設備の使用可否を確認し、トイレを安全に切り替えられる
  • 暗闇、暑さ、寒さをしのげる見込みがある
  • 携帯電話、ラジオ等で情報を受けられる

停電・断水・ガス停止は、単独なら直ちに在宅避難不可と決まるものではありません。一方で、複数が重なり、家族に必要な温度・衛生・医療を保てないなら移る条件になります。

設備は使えると確認できるまで止める

電気・ガス・水道が地域で復旧したという情報だけで、自宅の配線・配管・機器が安全とは限りません。焦げ臭さ、火花、浸水、ガス臭、配管損傷等がある時は使用をやめ、事業者、管理者、消防等の案内を確認します。

排水管の損傷が分からない時に水洗トイレを流すと、漏水や逆流につながることがあります。災害用トイレへ切り替える考え方を使い、自治体・管理側が使用可とするまで流さない判断も含めます。

在宅避難に必要な物の数量と更新は在宅避難の備え、停電時の生活差分は停電への備えで確認できます。備蓄があることと、安全に在宅避難できることは別の条件です。

健康・温度・医療・介助の継続条件を一人ずつ見る

同じ家にいても、在宅避難できる条件は家族ごとに異なります。建物と備蓄だけでなく、本人の生活機能から確認します。

条件 確認すること つなぐ先の例
体温 冷房・暖房なしでも安全な温度を保てるか 自治体の開設施設、保健師、救急相談等
薬・治療 普段の薬・治療情報があり、継続方法を確認できるか 主治医、薬剤師、医療救護所等
医療機器 必要な電源、酸素、消耗品、連絡経路が保てるか 主治医、機器事業者、自治体等
介助 食事、排泄、移動、意思疎通を家族だけで続けられるか 福祉担当、ケアマネジャー、避難所等
食事 アレルギー、離乳食、かむ・飲み込む条件等を満たせるか 避難所・自治体、医療・福祉担当等
心身の変化 痛み、息苦しさ、脱水、混乱等の変化がないか 119、医療救護所、自治体の相談先等

薬の量を変える、医療機器を家庭用電源へ自己流で接続する、食事・水分の制限を記事だけで変えることはしません。平時の医療・福祉担当者から受けている個別計画と、災害時の公的案内を優先してください。

建物が残っていても在宅避難できない人がいる

内閣府の在宅・車中泊避難者支援手引きは、ライフラインや家屋被害だけでなく、居住スペース、健康状態、食事、衛生、介助、相談等を分けて確認しています。

「家族の誰か一人が我慢すれば残れる」状態を在宅避難可としません。乳幼児、高齢者、障害のある人、妊産婦、持病・医療機器のある人だけでなく、けが、発熱、強い不安等で条件は変わります。必要な支援を確保できない時は、福祉・医療につながれる避難先を自治体へ相談します。

公式情報と支援につながり毎日見直す

在宅避難者も被災者支援の対象です。ただし、安否・ニーズの把握、物資の配布場所、給水、充電、相談、医療・福祉支援の受け方は自治体と被災状況で変わります。

内閣府の在宅・車中泊避難者支援ページには自治体向け手引きや現行通知が集約されています。実際の受け方は、自分の自治体の災害情報、避難所、支援窓口で確認します。自宅にいることを理由に、困りごとを伝えず孤立しないでください。

確認手段は一つにしません。

  • 自治体サイト、防災メール、防災アプリ等
  • テレビ、ラジオ、地域の防災無線
  • 避難所、給水所、地域拠点の掲示
  • 家族・近隣との連絡。ただし未確認情報を公式情報の代わりにしない

朝夕と、余震、雨、火災、停電・断水、体調変化があった時に六条件を見直します。「昨日は残れた」ことを今日の安全証明にしません。

在宅避難をやめる条件を先に決める

判断が難しくなる前に、家族ごとの退出条件を短く書きます。

  • 自治体や専門家等から、建物・区域が危険と案内されたら移る
  • 煙・ガス臭・浸水上昇・土砂・落下等の危険が出たら移る
  • 水・トイレ・温度を安全に保てなくなったら移る
  • 必要な医療機器、薬、介助、食事を続けられなくなったら相談して移る
  • 体調が悪化した、連絡不能になった、支援につながれなくなったら移る

移動が必要になった時、危険な経路を選ばないよう、行き先と経路も複数確認します。生命に関わる症状や差し迫った危険は119・110へ、地域の避難先・支援は自治体の災害窓口へ連絡してください。

今日行うのは、家族ごとに**「在宅避難をやめる条件」を一つ書く**ことです。自治体の避難所・在宅避難者向け情報ページと一緒に、紙とスマートフォンの両方へ保存します。

よくある質問

在宅避難とは何ですか?

自宅の安全が確保され、生活を続けられる場合に、避難所へ滞在せず自宅で避難生活を送る方法です。自宅から一歩も出ないことや、支援を受けないことではありません。状況が変われば別の安全な場所へ移ります。

家が壊れていなければ在宅避難できますか?

外から大きな損傷が見えないことだけでは判断できません。周辺の火災・津波・浸水・土砂、建物や設備に関する公的な判定・管理者の指示、使える部屋と出口、水・トイレ、温度、家族の健康・医療・介助、情報と支援への接続を確認します。危険の疑いがある建物へ確認のため戻らないでください。

マンションなら在宅避難できますか?

耐震性が高い建物でも、給水ポンプ、エレベーター、排水管、電気、共用部、出入口の状態で生活継続条件が変わります。建物・管理組合・管理会社・自治体の最新案内を確認し、上層階への物資運搬や必要な支援も含めて判断します。

在宅避難をやめる目安は何ですか?

火災・煙・ガス臭、津波・浸水・土砂、倒壊や落下の危険、行政・専門家等からの危険指示、出口が使えない、必要な水・トイレ・温度・医療・介助を保てない、体調が悪化した、公式情報や支援につながれない等です。危険が迫る時は持ち物より移動を優先します。